ウェブコンサルタントになるには

インタビュー vol.9

経営やビジネスにコミットし、成功事例をつくる。
事例を増やせば業界も変わる。

清水 誠氏
「清水 誠」公式サイト http://www.cms-ia.info/

清水氏

米国ユタ州での3年間に渡る任務を終え、先日、帰国したばかりの清水 誠氏へインタビュー。
UXとアナリティクスを融合させたユニークな視点から見る、今のウェブ業界と、今後の展望。また、日本とアメリカの違いについてもお話を伺いました。
(レポート:権成俊)

清水氏

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UXの限界から、解析、マーケティング、経営へ

権 成俊(以下、権)清水さんの現在のお仕事について教えてください

清水 誠(以下、清水)帰国後はデジタルマーケティング製品の活用を促進するための啓蒙活動に携わっています。また、ビジュアルWeb解析という手法の紹介と実践サポート、事例化も個人活動として続けています。

清水さんのスペシャリティとして「UXと解析の両方を知っている」という点があげられると思うのですが、その経緯について教えてください。

清水1994年に印刷会社でWebの商用利用を模索するというプロジェクトに参加し、最初はプログラマ/コーダーとして関与していたのですが、「紙から脱却したWebならではのデザインが必要」と気付いて、制作側に移りました。画像処理、UI設計、コンテンツ編集などを5年ほど地道に行なっていました。

1999年頃には米国で注目されていたUXやユーザビリティの考え方を取り入れ、日本での実践と開拓を始めました。そのため、数年後には良いサイトを設計・構築できるようになったのですが、今度は、UXは手段でしかなく、事業の成否を左右するサービス企画やマーケティングにも改善の余地があると思うようになりました。

そこで、印刷会社やコンサル会社のような受託型のビジネスとして企業の外側から提案や納品を行なうのではなく、事業会社の中に入って社内改善プロジェクトをリードするというスタンスに2004年に切り替えました。

組織の中では、社内プロジェクトの提案内容についてコンセンサスを得て、予算や他部門からの協力を得ることが重要です。そのために要件定義や啓蒙活動、段階的でアジャイルな進め方、データ活用などを試行錯誤しました。その延長でWeb解析の全社展開と推進サポートを担当するようになりました。

つまり、成果を出すためにスタンスを変え続けていたら、結果的にマーケティング・制作・開発に広く深く関わることになりました。突然違うことを始めたわけではなく、すべてつながっています。

今、解析で様々なデータが出せるようになり、重大な意思決定と解析は、身近になってきています。しかし、まだ、解析の専門家の方々は、仕事の半分以上は解析だと思っている方が多いと思います。もっと、経営やビジネスに対してコミットして、成果に貢献していくべきだと私は思うのですが、それについては、清水さんはどう思いますか?

清水解析もUXも一緒で、手法論に走ってしまい、成果を示せないことが多いですね。UXの場合は、時間をかけて理想のサイトを提案や制作するまでで終わり、解析の場合は、レポートを出して終しまい。その作業が認められないと、「分からない方が悪い」「この会社はダメだ」と自分を正当化してしまいがち。専門性が高まると、ついタコ壷化してしまうんですね。必ずしも全員がビジネス成果までコミットする必要はありませんが、それができると高い価値を認められるのは確かです。

アメリカでは、制作や解析だけを受託する会社はすでに淘汰されていて、あまり残っていません。数年前から、UXとアナリティクスの両方をカバーして、定量と定性を組み合わせて設計と制作を行い、成果を示せる受託企業が元気です。同じことを事業会社が社内で回せるインハウス化も進みました。

解析の専門家が、経営に入り込み、組織を動かすためのアドバイスとして、何かありますか?

清水「小さな成功体験を積み重ねる」「仲間を増やす」などの一般的なヒントは聞いただけでは身に付かないので、事業会社の制作やマーケティング部門に一度入社してみるのがオススメです。社外からでは、いくら良い提案をしても、その先はブラックボックスで、進まない理由が見えてこない。組織の中に入り込んで、良い提案がうまく進まない事情を理解し、試行錯誤する経験を積むと、糸口が見えてくると思います。

 

現場が頑張りすぎて、変化を遅くしている

アメリカでは、ウェブコンサルタントと言われる人はいるのでしょうか?

清水ウェブコンサルタントという肩書きはあまり聞かないですね。「結果にコミットするビジネスリーダー」は社内のポジションであって、局所的な専門家を外部から一時的に呼ぶことが多いためだと思います。小さなスタートアップであっても、データに対する意識とモチベーションがとても高く、データに強い人材を抱えています。伸びたり生き残る企業は、経営者がデータに投資しているんですね。経歴の長いアナリストは、実績を認められて昇進し、既に高いポジションについている。デジタルに追いつけなかった人は、淘汰されて力を失っています。

一方の日本では、経営の弱さを、現場の努力でカバーしてしまっているところがあると思います。その結果、意思決定すべき経営者の責任が薄まってしまい、それが、変化を遅くしているんじゃないでしょうか。
現場がボランティア精神で頑張って穴を埋めるというのは、自分の勉強にはなりますが、会社や業界の変化を遅くしているような気がします。

アナリストは、もっとスマートに、かつ野望をもって、ガツガツ経営やビジネスにコミットしていくといいと思いますね。

 

成功事例を作り、世の中に広める

私も仰る通りだと思います。「経営」や「戦略」を自分事として考えなければいけないはずなのに、今の世の中で、そう思える人がまだまだ少ないと感じています。自分の役割は、こういう議論の場をもっと増やして、自分事として捉えられる人を、引っ張り上げることだと思っています。

清水結果を出してロールモデルをつくるのも効果的ですよね。モデルがあれば、真似しやすい。 真似したくなる人がいて、具体的な事例が公開されている。しかも、その人たちや事例を実行した企業は報われていて、モチベーションUPにもつながる。

成功事例が十分に具体的で、更に、成果も数字で表れていれば、経営者も着目するだろうし、投資もすると思うんです。プロジェクト提案が上層部に却下されるのは、デジタルが新しすぎて理解されないというよりも、成果を数字で示せていないため。分からないのが悪いのではなく、意義を伝えきれていないだけ。

そういう事例を増やしたいと思っています。私が関わるプロジェクトは、いつも事例化が大前提です。取り組み方と成果が具体的な事例が増えれば、業界も変わっていくと思っています。

 

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