はじめに
この記事は、WEB解析 Advent Calendar 2013への参加記事です。
WEB解析にご興味のある方はぜひ他の参加者のブログもご覧ください。
誰の視点でウェブ解析をするか?
ウェブ解析レポートは、ウェブサイトの決算書のようなものです。
それを見る人の視点によって、見えるものが異なります。
決算書を見るのが営業責任者であれば、売り上げ利益を見て、もっと売らなければ、と考えるかもしれません。
しかしながら、営業担当者の努力だけで売り上げを伸ばすにも限界があります。
経営者であれば、毎年の売り上げの減少を見て、新規事業の必要性を考えるかもしれません。
営業担当者が限界を感じても、より高い視点で見たほうが、よりスケールの大きな改善ができます。
ウェブ解析も同じです。
ウェブデザイナーが分析するなら、ページの直帰率を見ながらキービジュアルのデザインの妥当性を判断するかもしれません。
構造設計の担当者が分析するなら、閲覧経路や閲覧範囲を見ながら、ナビゲーションの良し悪しを問うでしょう。
コンテンツ担当者が分析するなら、新しく追加したコンテンツページの滞在時間、そのページを見たあとにどのページを見たのか、コンバージョンしたのかを分析して、コンテンツの良し悪しを判断するでしょう。
いずれも価値ある分析です。
しかし、それぞれの分析を単体で行っても、効果は限定的です。
大企業のサイトであれば、部分的な改善でもそれなりの収益インパクトがありますが、小企業のサイトでは、部分的な改善をどんなに積み重ねても、大きなインパクトは出せません。
このような細かい改善に終始していては、ウェブ解析の費用に見合った成果を出すために、毎月のように細かいたくさんの改善を提案し無くてはならず、ウェブアナリストも、その改善を行う現場も疲弊してしまいます。ウェブ解析をもって貢献するウェブアナリストであれば、もっと高い視点で、効果的な分析をしたいものです。
担当者の改善視点が小さくまとまってしまう理由は、自分が決裁権を持つ範囲が小さいからです。
自分自身が、もしくは自分の所属部署が決裁権を持つ範囲であれば、自由に変更が可能なので、自分で分析しようという意識が働きます。
しかし、より大きな決裁権が必要とされる判断をする場合、解析から重要な示唆が見いだされても、これを実現するには組織に働きかける必要があります。
それが難しいと思えば、あえて大きな決裁を必要とする分析はしなくなります。
本来はそれがもっとも重要であるにも関わらず。
だからこそ、ウェブアナリストが代表して、ウェブ解析から示唆されるより高い視点をもった提案をすべきなのです。
これは言い換えれば、ウェブアナリストは組織に働きかけて大きな決断を促さなくては貢献できないということです。
ウェブアナリストには経営者の視点が必要なのです。
経営者視点のウェブ解析
当社では、経営の枠組みを考える際に3C分析というフレームワークを使います。
戦略立案やマーケティングで良く使われるフレームワークです。
サイトのユーザーは必ずネットで競合サイトと比較をしながらサイトを利用します。
そのため、中小企業でも明確な”選ばれる理由=差別化”が必要です。
3C分析で、自社の顧客、競合との関係を整理し、差別的優位点を明確にします。
明確な差別的優位点があるなら、ウェブサイトは高い成果を出す理由があるということです。
それなのに、成果が実現できていないなら、アクセス対策、もしくはサイトのどこかに問題があると考えられます。
しかし差別化が出来ていないなら、ウェブサイトをどんなに改善しても、成果が得られる保証はありません。
他店より高い家電品を売っていたら売れないのは当然ですし、他社より品質の低い商品であれば売れなくても当然なのです。
そんなときは、”選ばれる理由”をつくるところから考えなくてはなりません。
自社の強みを生かして商品、サービスの価値を高める必要があります。
顧客の絞り込み
しかし、そう簡単に他社よりも優れた商品、サービスを提供することはできません。
そこで必要なのが、顧客のセグメンテーション、つまり絞り込みです。
同じような商品、サービスを提供する競合と比較して、自社と相性の良いお客様はどんな人か、そしてそのお客様が評価している価値はなんなのかを考えます。
たとえばデジカメなら、総合力では負けていても、暗いシーンでも撮影ができるとか、動物や赤ちゃんのように、動くものを撮影するのに強いとか、望遠に強いとか、他の商品よりも特徴を絞り込んで価値を高めるのです。
どの価値を高めるか、と考えたときに、顧客ニーズがどのように分かれているのか、そして自社の強みを理解する必要があります。そこで、ウェブ解析が活用できるのです。自社の商品、サービスを積極的に利用するユーザーが何を求めているのか、競合サイトはどのような特徴を持っているのか、ユーザーの立場になってシナリオを追いかけ、ユーザーの視点を掘り下げます。
まとめると、3C分析は、自社の提供する価値と顧客セグメントを絞り込むことで、”選ばれる理由”を明確にするというフレームワークなのです。
分析によって明確になった”選ばれる理由”に基づき、これまでとは違う(絞り込んだ)顧客をサイトに誘導し、強みをより強く訴求できるウェブサイトを実現することで、ウェブサイトの成果が高まるのです。
組織を動かす
これをすべてウェブアナリストが一人で実現する必要はありません。
重要なのは、高い視点を持ってウェブ解析に取り組み、そこから得られた示唆をもって、組織に働きかけることです。
組織を大きく動かしてこそのウェブアナリストなのです。
コミュニケ―ション能力、プレゼンテーション能力が求められます。